■鍼灸治療を受けるということ                                  


                治療上のよくあるご質問、治療法の特徴等はこちら 


◇選択肢として選ぶ意味

社会、時代での位置づけ

現代の日本社会では、健康皆保険制度も整備され、「具合が悪くなったら病院」
という流れができていますから、鍼灸治療を選択肢として考えるという方は
まだまだ一般的に少ないのではないでしょうか?
                    
日本では明治時代以降、政府の方針で、それまで主流であった東洋医学に
替わって、いわゆる西洋医学が国民医療の基本になりました。医療の中心
であった鍼灸・漢方が表舞台を去り、民間療法と同じくくりに入ってしまった
訳です。
抗生物質、手術・救急医療によって、それまで当たり前に戦争や感染症で
バタバタと人が亡くなっていた状態から命が救われるようになったの
ですから、時代の流れとしては当然といえる変化だったのでしょう。
それからさらに時代も変わり、死因のトップ3は感染症などが姿を消し、がん・
心臓病・脳血管障害などのいわゆる生活習慣による病気になりました。
おおざっぱに表現すれば、「とりあえず危ない人を救っていた医療」の時代
からだんだん「早期発見・予防の医療」、さらには「積極的健康増進・治未病」
の時代になってきました。
あいかわらず現代医療の果たす役割が大きいというのは周知のとおりですが、
一方で「なぜこんなに医療が進歩しているのに、ますます病人が増え、医療
費は増加の一途をたどっているのだろう?」という現状があります。
おかしいですね。

そんな中で、すこしづつ患者サイドが主体的に医療機関、治療法を選ぶという
潮流が、まだまだですができつつあります。
日本の10年以上先をいっているという欧米では、かなり前記の考え方が
当たり前になってきているようです。
                 
一般に「代替医療」とひとくくりにされるものの中に「鍼灸医学」はあります。
一般の方々からみれば、鍼灸も整体も気功もはたまたリフレクソロジーも
どれも同じようなもので、一体どう違ってどう見分けるのかわからない!?
というのが正直なところなのではないでしょうか?

「はり師」、「きゅう師」、「あん摩マッサージ指圧師」は国家資格です。
看護士などと同様に、指定の専門教育機関で3年間、解剖・生理学なども
含め学習した上で国家試験に合格しないと、厚生労働省から免許が
与えられません。その他「柔道整復師」(接骨院の先生)も国家資格ですが、
整体その他のいわゆる療術師は民間資格で、実力もまさに玉石混交です。
足マッサージ系もほとんど無免許でやっているところが多く、信頼できる
治療家選びがムズカシイというのは、代替医療系の問題点としてあげる
必要があります。

日本国内では、病院以外の医療に関する国民の認識がかなり遅れている
のは否めませんが、むしろ欧米を中心とした海外での方が、医療として
しっかり認められ、一般の認識がすすんでいるかもしれません。
1972年には、既にWHO(世界保険機構)が鍼灸を世界の伝統医療として
認めていますし、西洋医学界の強い米国でさえ、国民のニーズの高まりを
無視できなくなってきています(鍼治療を受けている人は1000万人を超える
といわれる)。NIH(米国国立衛生研究所)は1997年の会議で、「鍼治療は
様々な病気に有効又は有用で、正式に医療として認知すべきである」という
勧告を行いました。
ちなみにハーバード大学医学部の卒後研修で、医師対象に鍼灸を教えている
講師は日本人の鍼灸師だったりします。

                    


一体何をしているの?

「なにがどう働いて、どうして効くのでしょうか?」
                    
素朴な疑問がある方も多いことと思います。数千年の歴史を持ち、パソコン・
携帯の時代になってもなお残っている鍼灸医学とはナニモノなのでしょうか?
世界はもちろん日本でも鍼灸の学科を持つ大学が現在数校ありますし、多く
の医療・研究機関で「科学的」研究がすすめられています。
科学という「ものさし」で解明されているのは以下の範囲です。
                  

血液やリンパの流れが良くなり、筋肉の緊張がやわらぐ。
脳内モルヒネ様鎮痛物質が分泌され、痛みが和らぐ。
鍼灸の刺激が痛みの刺激をブロックする。
*消化器・呼吸器・泌尿器などに働きかけ、バランスを調える。
*ホルモンや自律神経のバランスを調える。
*白血球等が増加して免疫力が高まるなど生体防御機構を強化する。


これらは鍼灸の効果のほんの一部であり、まだまだ全容解明には
ほど遠いというところでしょうか。
             

勘違いしてはならないとても大切なことがあります。
それは、

「鍼やお灸が病気を治している訳ではないということ」

です。


こう言うと????という感じですが、あくまで病を治している
のは「患者さん自身の身体の治ろうとするチカラ」です。

鍼灸治療は、患者さんの「カラダの不調なサーモスタットスイッチ
をいれるお手伝い」に過ぎません。


ツボと言われているところも別にメスで切ってなにかある訳では
ありません。ただ数千年の経験の積み重ねで、例えば解剖・生理的
には直接関係のない足の小指の先にシゲキを加えると逆子(さかご)
がかなりの高確率で治ったりするのです。
不思議ですね。
             

また、現代医学だと同じ病名には同じ治療法を施しますが、
東洋医学ではあくまで「治癒力を最大限に働かす為に」バランス
を取りますから、その人のその時の状態(体質・年齢・心の状態
・仕事生活背景等)に合わせてツボも道具も刺激も変えます。
つまり、
「既製の服」ではなく「都度オーダーメイドの服」
という訳です。

             


もうすこし違う角度の説明を試みてみましょう。

西の医学と東の医学の最も大きな違いは物の見方です。
松下襄さんという方が書いた『絵本東の医学・西の医学』
という本に、その本質の違いをとてもわかりやすく書いて
あります。




             
あくまでも「どちらが良い悪い」という話ではありません。
患者さんにとっての理想的医療を考える時に、それぞれの特長と
限界を知る必要があるということです。
             


その本では、おおざっぱに言って、西の医学は「狩猟の医学」、
東の医学は「農耕の医学」だと表現されています。
             

西の発想では、基本的にどんどん身体を「ミクロに分析して」
病の原因・対象(病原菌・がん細胞)を特定して、それをワクチン
やレーザーメスで取り除く、消滅させるというようなアプローチ
が取られます。
[見る・殺す]が基本という訳です。(言葉がきついですが)
なので、顕微鏡やレントゲンなどの発達した近現代では時代背景にも
なじみ、大きな成果をあげてきました。
ただし次の問題点があると述べられています。


@撃ち殺した死体・残骸の後始末:
うまく排出できないと後遺症・副作用が起こるし、量が多いと肝臓・
腎臓に大きな負担がかかる。

A獲物が見えない時:
見えない敵は狩りようがないということです。必然的に検査過剰
になりやすく、検査による負担もばかにならないということです。

B狙いをはずすと・・・:
対象が確実に特定しきれない場合は闇夜で鉄砲を撃つような状態と
なり、正常な細胞、有用な細菌にダメージがある。

C自然の摂理に逆らえるか?:
いくら健康に邪魔なものを見つけて除去しても、その人のライフ
スタイル、体質が変わらない限り「自然発生」を止めることはできない。

などの問題点を松下氏はあげています。
      


東(中国)の医学については、基本的に検査機器などない大昔から
発達してきているので、人間の身体を1パックにまとめて、総合体
として診、全体の「調和」をなにより大切にしています。
健康を邪魔する悪者に関してもやっつけるというより、平素から入り
づらくする、入っても追い出すという発想が働いています。
また、人間も結局「自然の一部」というとらえ方を強く持っています。
自然はそもそも奇跡とも言えるような自浄作用、自己修復作用を持って
いますが、それ(自己治癒力・免疫力)が働きやすいように「身体を耕す」
のが得意という訳です。
問題点としては以下をあげています。

@耕し方を間違えると:
自分で自分の身体に穴を掘るようなもので、変化も緩やかなので
気がつきにくい。

A狂暴な敵に襲われたら:
スピードの速い伝染病などに襲われると対応しきれない場合も
ある。(ただし新型伝染病など西洋医学で対応法がないもので
効果をあげるものもあったりする。)
             
などです。


あと上記の観点以外に感じるのは、西洋(現代)医学は、設備とお金
がかかり、多くの患者に対応できやすいが、専門家向けであること。
専門以外を診られない医師が増えている為、複数の症状を抱えている
患者がたらい回しにされてしまいがちな点。心因的要素を多く抱えた
患者をじっくりケアできる体制がない点。その他日本では「国民皆保
険制度の枠」で、経済的に助かる反面、患者ひとりひとりへの対応が
時間をかけて丁寧にできない、病院経営上、薬を多く出し過ぎる傾向
等の点です。
東洋(中国)医学は設備、お金がそれほどかからないかわりに、差し
迫った状況への対応力は劣る面「も」あるということ。
ただし、セルフケアにはとてもなじみやすい。
・・・という感じでしょうか。

 
蛇足その1

二つの医学の違いは、大規模農業と自然農法のやり方にも例えやすい
気がしています。


*西洋医学・現代農業:

機械化を取り入れ、少ない農家で大量人口のニーズを支えている。
作物が病気になった時に病原菌を突き止めて殺虫剤をまく。
遺伝子組み換えで病気に強い品種を作る。
病気にあらかじめならないようにえさに抗生物質を混ぜておく。

*東洋医学・自然農法:
自然の摂理に逆らわないように作物を育てる。
風土・季節に適した作物を適期に植え、植物全体の勢いをつけて
やれば、自身のチカラで病気・害虫を乗り越えられる
(適当に虫に食われるが、異常気象に強かったりする)
土づくりにチカラを入れる。
設備・お金はあまりかからない。



蛇足その2

鍼灸や漢方は「効果が緩やかで慢性症状向け」という認識を持って
いる方々(時に専門家も!)が多いようですが、じつはそんなこと
はありません。鍼灸などその場で劇的に効く場合が少なくないですし、
脳卒中直後などにやるある種の鍼法などおそらく西洋医学など比較に
ならない程の効果をあげます。(現代はすぐ救急車を呼ぶのでなかなか
やる機会はないのですが、知り合いの先生はたまたま父親の倒れた所
に居合わせ、救急車が来るまでに対応。ほとんど後遺症は残らなかった
そうです。)
漢方薬も「煎じ薬」は急性の症状に即効で効きます。
(病院で出るいわゆる漢方製剤は、使用する医師サイドの知識・認識
の問題も含め本来の漢方薬の実力が発揮しきれていないのが現状)
ただし東洋医学は治療上の危険がないように思われがちですが、「良く」
できるということは「悪く」もできるということ。誤って治療すれば
悪化することももちろんあります。
                             
                


◇治療上よくあるご質問                 


Q1 初めてで、鍼やお灸のシゲキが怖いのですが?

ご心配はいりません。患者さんの感受性に合わせて、なるべく軽い刺激で調節
することを基本としています。
ほとんど全員の方が「気持ちいいですね」「思っていたより全然大丈夫ですね」と
おっしゃってくださり、初診から眠ってしまう方も多いほどです。
ただし当院の場合、ただ無痛・心地よさだけをうたうだけでなく、状態、ご希望に応じて
患者さんと相談しながら、「少々刺激があっても効果の高い」特殊な鍼を使用する
場合もあります。
鍼灸の場合、「あちこち行ったけど治らないので来院」されるというパターンが少なく
ありませんので。(ただしあくまでも無理はしません)


Q2 どれくらい通うと治るのでしょうか?

一概に言えないのですが、傾向として急性のものは早く治る場合が多く、慢性のもの
はそれなりに期間が必要な場合が多いというところがあります。
ただしあくまで「傾向」であり、何年来の症状が短期間に治ることもしばしば経験します。
また「手術しかない」と言われたようなもので、どうしても手術は避けたいということで
じっくり定期的に通院して手術しないで済んだなどという場合もあります。
いずれにしても患者さんによって状態がまちまちですし、病院に行った方が良い場合も
もちろんありますから、まずご相談ください。
初診の後、個別の説明(見通し・養生法)をさせて頂いています。


Q3 感染とか安全面は大丈夫ですか?

不安のある方もいらっしゃるかと思います。
当院では消毒に関しては病院同様、WHO(世界保険機構)指定の高圧蒸気滅菌法
(132℃-20分)を用いて、万全を期しております。ご希望により、ディスポーザブル鍼
(使い捨て)のご用意もありますので、どうぞご安心下さい。





Q4 治療中はどんな格好でするのですか?

基本的に首・肩・背中・腰・腹・肘や膝から先を使って治療する場合がほとんどです。
必要な箇所をめくって治療するか、ご希望の方には専用の治療着をご用意しています。
着慣れていらっしゃるTシャツ・短パンをご持参頂く方もいらっしゃいます。


Q5 刺激は強く、長時間治療した方が効果が高いのですか?

そういう訳では全くありません。たまに「今日は何本鍼を打った」と数えている患者さん
もいらっしゃいますが、多ければ得で、減ったら損という問題ではありません。
あくまでその時の患者さんの状態・体力等を総合的に考慮して、全体の刺激量を決めて
います。基本的にあっちもこっちもと多くやりすぎると、身体が処理しきれず、効果が分散
するように感じています。厳選した最小限のポイントに治療して最大限の効果をあげるように
工夫しています。


Q6 こちらの治療院の治療法・特長はなんですか?(特殊鍼って何ですか?)

施術者は、通常あまり使用されることが少ない様々な日中伝統医学の特殊鍼法・灸法
も習得しております。(怖いものではありません)
他の治療院で難しかった症例の改善ケースも多数あります。

*通常よく使用する治療法:
 接触鍼法(純金製の刺さない針)
 温灸法(やけどしない気持ちいい灸法)
 日本鍼・中国鍼(細い通常の鍼)
 灸頭鍼(鍼とお灸の両方の効果があるやり方)
 刺絡鍼法(うっ滞した悪血を少量吸い玉などで放出する療法)

その他難治性のものには特殊な鍼(純金製の長・大鍼、はん鍼等)を使用したり、
心理療法的ワークを併用することもあります。


Q7 治療の後、からだがだるくなるのですが?

個人差が大きいのですが、治療後一時的に眠かったり、だるかったりする場合が
あります。 基本的に身体がバランスを取る為に一時的に起こる現象で、静かに
休んでいれば心配はいりません。その後はすっきりしてきます。
悪いことではないのですが、生活に差し支えがあっても困りますので、なるべく
起こらないように配慮しながら治療しています。


Q8 治療後の望ましい過ごし方を教えて下さい。(風呂・飲食・運動・休み等)

基本的に、治療後も身体の中ではバランスを取る為の動きが起こっています。

生活上可能であれば・・・
 なるべくのんびり過ごし、早めに寝る。
 お風呂は入らないで済めば入らない
 (治療後4〜5時間開ければ入っても良いのですが)。
 アルコールは控え、消化の良い食事をいつもより少なめに取る。
 運動も控えた方が良い。
 (ただし状態・治療時期により適度に取り入れた方が良い場合あり)


Q9 賢い鍼灸治療の利用法があったら教えてください。

鍼灸と言うと、「身体の様々な痛み」という認識の方が比較的多いように思いますが、
基本的に「身体の治癒力を最大限に引き出すアプローチ」なので、よほどでない限り
治療の施しようは「ある」とお考えください。

以下のものは、痛み系以外にとくにオススメだなあと感じるものです。


 *薬を使いたくない小児科・婦人科全般

  女性は一生にわたってオススメです。
  例:月経困難症、不妊、つわり、安胎、逆子、陣痛促進、産後のケア、
    育児期の母子の体調管理、更年期障害等

 *様々な炎症

  捻挫、打撲をはじめ、ものもらいや各種虫さされ、帯状疱疹など様々な
  炎症の苦痛・ 緩解に即効性があります。

 *風邪

  これこそ身体の治癒力のみで治る代表的疾患。
  一般の感冒薬は症状を抑えるだけで治している訳ではありません。
  鍼灸治療により、いい意味で症状が軽くなり治癒のプロセスを促進します。

 *むちうち(交通事故後遺症)

  自分が交通事故にあったら、迷わず鍼灸と思うほど効果が高いです。
  でも自動車事故保険じゃ受けられないからと思っている方もいらっしゃる
  かと思いますが、大丈夫。受けられます。(※)

 *消化器系全般:

  得意とする領域です。
  食あたりなど足の裏の特効ツボにお灸するとウソ!のように楽になります。

 *日射病・熱中症

  これもほんとよく効きます。鍼灸を選択肢に考える人はほとんどいないでしょうね。

 *静脈瘤に伴う症状

  これも意外かもしれませんが、効果的です。
  ただし瘤そのものは多少へっこみ ますが、なくなりはしません。

 *美容:

  
女性の患者さんで鍼灸治療を続けていると、副産物として「肌がきれいになった
  なあ、目にチカラが出て、いい笑顔だなあ」と感じることがしばしばです。
  高い化粧品やエステにお金をかけるなら、定期的に鍼灸を利用して、健康になった
  上にキレイになる方がよっぽど良いのになあと、「心の底から」思います、ハイ。

 *ケアの質向上
  
  例えば高齢者や末期ガン患者の方など付随する身体的症状、不定愁訴全般の
  改善にとても効果的です。



  *参考WHO(世界保険機構)が有効とする疾患一覧



 *ペット・家畜のケア

  鍼灸や漢方が思いこみやまやかしでない点を物語るひとつの事実として、動物への
  効果があげられます。鍼灸を導入する動物病院は少しづつ増加しているそうです。
  家畜や競争馬に鍼灸治療を施しているニュースをご覧になった方もいらっしゃると
  思います。







上記にない疾患でもお気軽にご相談ください。





※参考:自動車損害賠償責任保険の保険金等及び
     自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払い基準
     平成13年告示第1号
     『免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、
      はり師、きゅう師が行う施術費用は必要かつ妥当な実費
      とする。』





TOPページへ